ボイスコンサルタント 鈴置和音インタビュー 「理想の自分は”声”で叶える。」唯一無二の声を磨いて、人から”モテる”を応援したい。

2020.12.29up
始めて鈴置和音さんに会ったときの印象は、“快活で溌剌とした女性“でした。和音さんの声と表情がハーモニーのように重なって、こちらに心地よい音と空気を運んでくれるような在り方は、和音さんの魅力そのものでした。やりたいことが次から次に溢れて、気づけばそれが叶ってるという和音さん。その言葉には彼女の信念と情熱が宿り、幼い少女がなりたい自分を夢見て決意した頃からずっと繋がっているように感じました。そしてそれはこの先も続いていくのでしょう。MCやナレーションに加えて、独自のボイストレーニングを提供するなど幅広くご活躍の和音さんの”声“にこめられた想いについてインタビューしました。

和音さんはどんな流れで声のお仕事をしたいと思われたんですか?できれば小さい頃からのエピソードも交えて教えていただけますか?

声に関心を持ったのは、10歳の頃通っていた学習塾の”あいさつ大賞”に選ばれたことがきっかけです。その塾に通う全生徒の中で、一番明るく元気に大きな声で挨拶が出来ていると褒められました。音楽関係の仕事をしている父の影響で、昔から歌をうたうことも大好きでしたが、歌ではなく”声”そのものに関心を持ち始めたのはちょうどその頃だと思います。中学では、軽音楽部に入りガールズバンドを結成。当時、ドラムを習っていたこともあり、本当はボーカル希望だったのに、バンドではドラム担当になってしまいました。どうしても、自分の声を試したい好奇心は止められませんでした。そして、ボーカルスクールに通わせてもらって、そこからボイトレを始めました。中高一貫の学校だったので、中高時代はずっとドラムを担当することとなりボーカルの夢は叶えられませんでしたが、大学で漸く軽音楽部に入って、念願のボーカルになることができました(ドラム経験者ということは隠していました。笑)私の学生時代の夢は、人の面倒を見るのが大好きだったというのもあって、学校の先生。教師を夢見て、大学の心理学科で臨床教育学を専攻しました。結局卒業後は、証券会社の営業担当として入社するも1年で退職することに。その頃も教育に関わりたい夢は続いていたので、その後医療系の専門学校に転職しました。そこでは進路アドバイザーとして、高校生や夜間クラスへの入学を考える社会人など、受験生の進路相談に乗る業務を担当をしました。その職場ではとにかく夢を語る学生たちの目の輝きにとても心を打たれることが多くて、同時に羨ましく感じていたんです。「自分はもっとやりたいことがあったのではないか」「何歳からでも夢は叶えられるはず」という自分の真の声をその時はじめて聞いた気がしたんです。「声」や「歌」に関わる仕事をしたい。その願いを叶えるためにそこから色々調べはじめて、ボイストレーナーという仕事に出会いました。「声」+「教育」は、私にとって最高の組み合わせで、これだ!と確信して、迷いなくボイストレーナーになることを決意しました。当時、正社員でボイストレーナーを募集していた会社に履歴書を送り、採用されました。そして東京渋谷のボイストレーニングスクールで働くことになりました。

和音さんの中にはずっと幼少時から声への関心が灯火続けていたのが素敵ですよね。そしてまさに自分のその声を聞いてからの行動力がすごいですね。そこからまた更に声の学びに目覚められたとか。その後のお話をしていただけますか?

そのボイストレーニングスクールでは、指導者として歌や声と話し方のボイトレを行う立場にいたのですが、ある時から自分はプロの歌手やアナウンサーの経験がないのに、人に教える立場であることに疑問を抱くようになりました。そして私も「声のプロ」になろうと思い立って、ボイストレーニングスクールを退職。本格的なボイストレーニングを受けるために、NYへ渡米しました。NYの学校では日本の有名アーティストや俳優さんにも指導経験あるボイストレーナーから直接指導を受けました。そこの先生から放たれるエネルギーはとても刺激的でした。滞在中にハーレム地区の教会で、黒人の方たちの生のゴスペルを聴いた時は、あまりの迫力に心を撃ち抜かれました。そして心の奥底に眠っているもの、思いをパワフルに声を使って全力で惜しみなく吐き出し表現することが、日本人には足りていないように感じました。joyful,joyfulを壇上に上がって一緒に歌わせてもらった時の感動は忘れられません。そこで経験したことがきっかけで、私はとにかく奥底から声で表現したい熱い思いを日本へ持ち帰りました。それから帰国してすぐに、アナウンススクールに通い始めて、司会者事務所のオーディションを受けました。11社中10社からオファーをいただき、全ての事務所のレッスンを見学した上で、今の事務所の社長の漲るパワーに惹かれて所属を決めました。

今具体的にはどんな分野でご活躍ですか?

全て「声」を使ったお仕事で、大きく分けて3つの分野に分かれています。1つ目は、ボイストレーナー。主にビジネスパーソンの方向けに、好印象を与える声の出し方や話し方を指導しています。1番人気があるのは「声分析」です。これまで1,000人以上のお声を聞いてきた経験を元に、10歳の頃からいろんな人の”声”に注目し探求してきた耳を生かし、独自の視点と聴点でそれぞれの声の特徴、良いところ、改善点をお伝えしています。必ず良いところを見つけます。そこから、生徒さんそれぞれに合わせたオーダーメイドでのトレーニングを行っていきます。声のパーソナルトレーニングが1番人気です。2つ目は司会業。結婚式やイベントなど年間100本以上の現場を担当しています。最近では、別のお仕事で出会った方からお声がけをいただいたり、SNSやwebを通じてご指名をいただき、オンラインセミナー等の司会を担当することも増えています。3つ目はナレーターです。YouTubeやTikTokなどで流れているwebCMのナレーターをしています。元々、私の歌のレッスンに通ってくださっていた生徒さんが広告関係のお仕事をされていて、その流れで是非ナレーションをしてほしい、とお声がけいただいて始めることになりました。

会社や学校法人で働く経験がある和音さんですが、自分が目指す道はこれだ!と思った何か決定的な出来事やきっかけはありましたか?

冒頭でお話しした学生達が目をキラキラと輝かせながら自分たちの夢を語る姿を見た瞬間と、音楽関係の求人サイトを閲覧していた時、ボイストレーナーの求人が出てきて、「声」+「教育」=ボイストレーナー、これが私の道だ!と出会った瞬間です。

お話を聞いていると、自分の思いにとても敏感で、そこから道を切り開いていくことへの決断がとても潔い和音さんですが、その源泉にあるものって何でしょう?

私は、中高一貫の女子校で育ちました。個性を大事にしてくれる校風の学校だったので、自分の意見を持つことを学べた気がします。でも、社会人になりたての頃の自分は、中学から高校進学時の環境の変化がなかった分、他の人よりも新しい環境に飛び込むという機会が少ないことにコンプレックスをもっていました。1度目の転職が、はじめて新しい世界に飛び込んだ経験だったのですが、いざ飛び込むと視界が広がっていく感じがとても楽しくて、それからハマってしまったという感じもあります。とにかく、私、やりたいことがたくさんあって次から次へと出てくるんです。そしてそれが、いつの間にか叶っている。しかも、目の前のことを一生懸命頑張っていたら、やりたいと思っていたことが勝手に向こうからやってきます。好きなことに関しては、迷いなくどんな場所でも向かっていけるチャレンジ精神と勇気が武器ですね。

小さい頃から自分の声に何か目覚めてらっしゃったのですか?面白いエピソードや今の和音さんに繋がるような体験などあれば教えて下さい。

父親が音楽関係の仕事をしていて、昔から音楽には馴染みがありました。実家の廊下には、ギター、マンドリン、バンジョーなどの楽器が壁にかけられていて、幼い頃は、廊下を歩く時に、適当にジャラーンとか鳴らしながら歩いていました。父親が酔っ払うとギターを出しては、オリジナルソングを歌い出す姿を見ながらいつも一緒に歌っていました。、親バカな両親から「歌が上手」「声がキレイ」と褒められたことも自信になっていたんだと思います。でも、ピアノは苦手でしたね。今思うと上手に弾けないのが悔しかったんだと思うのですが、いつもピアノのレッスンの時は、グランドピアノの下に潜り込んで、先生が右から手を出してきたら左に逃げて、左から手を出してきたら右に逃げてとふざけて30分間ほどをやり過ごしていたことを今でも覚えています(笑)。あとは、幼い頃から色んなコンサートやライブに連れて行ってもらって、プロのアーティストの方の生の声を聞いていたという経験や環境も大きいかもしれません。

先日『月曜から夜ふかし』でご紹介されていた和音さんの講座を見てびっくりしたのですが、関西弁を学びに来られる方がいるとか!それってすごく関西人の私にとっては衝撃的だったのですが、改めてどんな方が来られてるか教えていただけますか?

声優さんや俳優さんなど、関西弁を喋らなければいけないけれど、正しい発音がわからないから学びたい、というお仕事で来られる方。また、最近では関東出身だけど芸人になりたいからNSCに入学する前に関西弁をマスターしたい、という真面目な女の子もいました。その子は、汚い下品な関西弁が学びたいと言ってきたので少し戸惑ってしまいましたが!(笑)その他は、関西弁に興味があってという方も多いです。昔から関西が好きで、関西弁を話してみたいけどどうしてもエセになってしまう。旅行の時にエセだとバレないように関西弁を話してみたい、とか、取引先の関西の方に流暢な関西弁を披露して喜んでもらいたい、とか、面白い人になりたいから関西弁を通してテンポよく喋れるようになりたいとか、いろんな方が来られますよ。

講座を提供されていて一番楽しいと思われることは何でしょう?

出来なかったことがトレーニングを経て出来るようになった時の生徒さんの嬉しそうな笑顔が大好きです。白米3杯くらいいけそうです。表情筋が全く使えていなくて、いつも怒っているように見えてしまっていた40-50代男性の生徒さん達が、嬉しそうに少し口角が緩んでいるのを見たりすると本当にかわいいなと思います。ボイトレは筋トレと同じなので、すぐに効果が出るというものではありません。いつも初回レッスンで生徒さんにお伝えするのは、「私はめちゃくちゃ三日坊主タイプで、筋トレとか自主トレとか大嫌いで絶対続かないんですよ。そんな私が今日だけ腕立て伏せを100回やっても(できないけど)ムキムキマッチョになりませんよね?」って。元々お話上手な方が、翌日のスピーチを控えて、より一層伝わりやすく話せるようにアドバイスをしてほしいと来られた場合は、30分や1時間でコツだけお伝えすると、なんとなく上手に喋れるようにはなります。一方、声にコンプレックスをお持ちの方などの、発声や滑舌の根本的な解決は1日ではできないので、少しずつ地道に鍛えていきます。3ヶ月〜半年ほど経つと、生徒さんが声が出るようになってきた!滑舌よく話せるようになってきた!と、ご自身で実感できるようになり、それをご報告いただける時は本当に嬉しく思います。レッスンの成果で上手にスピーチができた、登壇できた。などのお声をいただくことも嬉しいです。生徒さんの夢や目標が叶う瞬間に立ち会わせていただいてるような気持ちになります。ボイトレは筋トレと同じ。正しいトレーニングの継続が大切。トレーニング方法を聞いて「へぇ!」と思っただけでは何も変わらない。「へぇ〜分かりました!」で終わってしまう方がとても多いんですが、そこから本質的に変われるかどうかは、主体的に継続できるかの自分次第。なので三日坊主でタイプの方は、1~2週間に1回はレッスンに通ってほしいですね。最初の1歩をご自身で踏み出してもらえたら、そこからの道筋は私がしっかりと照らして一緒にゴールまで伴走します。

そんな和音さん、プライベートはどう過ごされていますか?

今は丸一日休みを取ることがほとんど出来ない状況なのですが、移動途中にペットショップを見つけると、立ち寄って仔犬を見て癒されています。あとは、人間観察が好きなので、ガラス張りのスタバでiPadで仕事をしているふりをしながら、人を眺めていることも多いです。あとは、少しでも時間ができると1駅2駅遠くで降りて、散歩をしています。2021年は、もう少しスケジュールを上手に調整して、プライベートの時間も確保したいですね。今は、仕事が楽しいです。

最後に、5年後の和音さんのビジョンをお聞かせください。

もっとたくさんの生徒さんの力になれるようになっていたいです。今は、個人の生徒さんがほとんどなのですが、企業研修にも力を入れていきたいです。また、子供達の指導も行っていきたいです。これまで1000人以上の生徒さんと接してきて思うことは、みなさんそれぞれに個性と良さと魅力があるということ。自分には良いところがない、改善点ばかりだと自己評価が低い方が多いのですが、そんなことは全くない。私のレッスンでは、まず初めに声分析を行いますが、その方の印象分析から始めています。どうしてそのような印象を持たれるのか、声や話し方や表情筋の動きを見て、分析していきます。その中で、私は100%その人の良いところを見つける自信があります。それが私の最大の武器でもあります。どんな方でも素敵なところを見つけます。子供たちにも、もっと自信を持って欲しいんです。自分で自分の良いところを一つでも見つけられたら、もっと強くなれるんじゃないかな、って。自信が表情に現れるとよく言いますが、声にも現れる。逆にいうと、声がしっかりしていれば、自信があるように見える。声と話し方を磨くことで、自信を持って未来へ夢に向かって力強く進んで欲しいと思います。それから、同じように人の素晴らしい才能や個性を見つけることが得意なプロの方々と、魅力を高めるトータルコーディネートなどもしてみたいです。”異性モテ”ももちろん良いけれど、”人から”モテる。自分がなりたい理想の人になれるようなプログラムをつくりたいですね。取引先からモテる営業マン!お客様にモテるショップ店員さん!妻にモテる夫!子供にモテるお父さん!でも何でも。モテたい人からさらにモテる人が増えたらいいなと思います。私自身、学ぶことが大好きなので、今後も学びは止めずに、もっとスキルを磨いて、生徒さんのレッスンに還元していけるように頑張っていきたいです。

生き生きとした表情と声でインタビューに答えてくださった和音さんはユーモアのセンスもたっぷりで本当にお話が楽しい方。そんな和音さんの関西弁をテーマにしたYoutubeもめっちゃ面白いです。リズムと可能性という言葉がぴったりな和音さんの今後のご活躍がとても楽しみです。

鈴置和音
Kazune Suzuoki
兵庫県出身。大学卒業後、企業での営業経験を経て25歳で単身上京。ボイストレーナー歴7年。指導人数は1,000人を超える。アイドル/声優/芸人/政治家などへの指導経験多数。TV出演やセミナー登壇を必要とする経営者からの指名も多い、現在は、司会者事務所に所属し、プロ司会者として、年間100本以上の結婚式・イベント・セミナー等をこなす。また私立高校で、コミュニケーションやトークレッスン指導などを行う非常勤講師も務める。関西弁の方言指導者としても活動しており、レッスン風景が「月曜から夜ふかし」で紹介され話題に。webCM等のナレーションも多数担当と活動の範囲を広げている。website : https://oto-voice.sakura.ne.jp/
Photography / Interview and Editorial Design: 雨森希紀(Maki Amemori)