起業家 / ヴァイオリニスト 奥村菜乃子 インタビュー「最高の出会いを手にして届け続けるために、想像を超えていきたい。」

2022.9.18up
現在、イタリアのバッグをはじめとした革製品、トリュフなどの食品を取り扱う商社 インペラトリス株式会社の経営者として、また、幅広いジャンルでのヴァイオリニストして活躍中の奥村菜乃子さん。インディペンデントの姿勢を貫きながら、常に時代の波と対峙する。そこから、独自性と変幻自在な”カタチ”をつくり出していく人。そんな彼女から漲るのは、パッションとユーモア。一流のクオリティを手にするためにはとことんこだわる、歩く、求めるアグレッシブさは、誰もが羨む美しいビジュアルとは裏腹に勇敢な戦士のよう。理路整然と話しながら、少女のように大口をあけて屈託ない表情で笑う菜乃子さんからは多面的な魅力が広がっています。彼女の中からどう「今」の思いや挑戦が芽生えていったのか、その源流と素顔の菜乃子さんについてインタビューしました。

菜乃子さんは今アーティストとしても実業家としてもご活躍ですが、具体的にどんなことをされているのかご紹介ください。

アーティストとしては、ヴァイオリン奏者として活動していますが、ジャンルはかなり広めです。最近は、主に聴き馴染みのあるアニソンなどを演奏しています。Youtubeに「NADESHIKO VIOLIN」というアカウント名で動画を投稿しているのですが、その名の通り、音楽をはじめとしたあらゆる日本の魅力を音楽を通して感じてもらいたいなというコンセプトがあって、その象徴として着物で演奏しています。それが運良く海外の方に届いていて、かなり多く視聴していただいています。
実業家としては、現在はイタリアからトリュフ食品・生地・革製品を輸入して、それらの販売事業を行っています。どの商品も日本にない、もしくは今まであまり知られることのなかった魅力的なアイテムです。現地へ足を運び、選びぬいて輸入したものを取り扱っています。

双方の活動で日本とイタリアのそれぞれの魅力を全く違った形でお仕事にされているのはとても興味深いですね。ヴァイオリンはいつ頃からはじめたのですか?

祖父母宅に置いてあったピアノには見向きもしなかったそうなのですが、4歳の頃です。当時、爆発的人気を誇っていた“BOND“というアーティストに憧れて、中でも特に目立っていたヴァイオリンを自分の意志で習いたいと思いはじめました。一番当時の私から見た時にとても華やかに見えて、目立ちたかったからという単純な動機からだったかもしれません。

現在の得意なジャンルと アーティストとして表現することへの思いを教えてください。

基本的にオールジャンル演奏します。クラシック以外なんて邪道だ!とか、軽率にJPopの曲をネットにあげるのは安売りだ!と以前は思っていました。そして、自分がヴァイオリンを選んだ理由は、Pops×クラシックの斬新な組み合わせに惹かれたからこそだった、ということを思い出したんです。音を磨くことに一生懸命になりすぎるとつい視野が狭くなって、変なこだわりが出てしまうのですが、今は、「自由自在」に弾くことこそに、音楽の真髄があると実感しながら楽しんでいます。表現することへのこだわりは、単にヴァイオリンを弾くだけではなく、演奏者自身のビジュアル演出も個性的に仕掛けることですね。私の場合、イタリアで選んだ特別な生地を用いて着物を仕立ててもらい、その着物を着て演奏しています。「NADESHIKO VIOLIN」という特殊な表現です。曲は、歌い手さんによっても大分雰囲気が変わりますが、ヴァイオリンも同じように、演奏者によって変化する面白い化学反応が楽しめると思います。

YoutubeをはじめとしたSNSを通じて、NADESHIKO VIOLINをどんな人たちに届けたいですか?

特定のこのマス層!というよりも純粋に様々な人に聴いていただけたら幸せです。
そういえば小さいころに親から医者になるか演奏家になるかの2択を迫られたことがあり小さいながらも「目の前の一人を救うよりもいろんな人に音を届けて幸せになってほしい」と言った記憶があります。 今もその思いは変わりません。疲れた人にとっては、奏でる音が寄り添うような存在であったら嬉しいです。また元気がでるような曲は、聴いていてポジティブになってもらいたいと願いながら演奏しています。

音楽だけでなく、会社も設立され、イタリアのトリュフ食品・生地・革製品を輸入販売されていますよね。取り扱っている製品についてのこだわりや他にない魅力を教えてください。

まず、食品に関しては、国内で開催されているイタリアフェアなどではなかなか見かけないものは何か、を徹底的に調べます。現地に行って試食を重ね本当においしいものだけを厳選して取り入れています。蓋を開けて、口にした時に「わあ~!」と思わず声が出てしまうようなそんな食品ばかりです。特にトリュフ好きにはたまらないクオリティです。生地に関しては、食品と同じように、なかなか見かけないイタリアンシルクや海外製ならではの美しい色使いや生地感にこだわって仕入れています。私がお取り扱いしてるものは、実際にまだ日本には輸入されていないものなので、お取引先の方も「日本で手に入る」ことに感動していただいています。革製品はかわいくて使い勝手がよく、アートとのコラボの可能性を秘めたものを選んでいます。またイタリアンレザーならではの艶と強度と色合いに強く惹かれる人が続出すること間違いなしです。

 

なぜ、イタリアにこだわられたのでしょうか?

クレモナもありますし、ランジェリーも世界で一番美しい。街や食事、住んでいる人々に惚れ惚れしてしまいました。日本の空気感とまた違ったオープンさというか。ハイブランドの生産地でもありますから。技術力の高さに魅了されました。とにかくどうしてこんなに良いものが日本にこれまでなかったの!?と驚くことばかりです。

コロナの影響でなかなかまだ海外には行きにくいという状況であえて足を運んだ。掻き立てられるものはなんでしょうか?

実は海外に行くのは20歳のウイーン以来6年ぶりだったんです。逆張りだったのかも(笑)。とにかく、待ち切れなかったんです。私に「コロナ明けたら会いましょうね」みたいないつになるかわからない状況はとても嫌だったのでイノシシみたいに飛んでいきました。

やはりインポートの製品はバイヤーである方のセンスやこだわりに大分左右されると思うのですが、菜乃子さんがセレクトされた製品は色やデザインの幅も広くあってどれもとてもセンスが素敵ですよね。センスの源はなんでしょうか?

惹かれるアイテムから目が離せなくなるのは、自分のセンサーが反応しているからだと思って、そこからはじっくりと手に取って観察します。普段のショッピングでも「あのお店のあの服が、バッグがかわいかった」と夢にまで出てきてしまうものは、大抵1週間引きずっていたら、買いに走っています。実際人も物もご縁なので。縁がなければ、私の元にはきていないでしょうし。おそらくこれまでに私が経験を重ね、インプットしてきたものをベースに“直感”で自分の心と行動を動かす先にあるものがご縁あるものだというのが、結果センスになっているのだと思います。そのセンスはとても自負しています。

素敵なイタリアから輸入されたこだわりの製品の数々は、どんな世代の方々に届けたいですか?

20代~40、50代の女性です。これはファッションに限ったお話になってしまうのですが、見たことないキラキラしたものを探してたどり着いてそして身に着けてほしい。だれも持っていないようなものを自分が最初に身に着けるってとても自信になると思います。 食品に関しては、様々な方々に出会えてもらえたら嬉しいですね。お酒と一緒にスライストリュフを楽しんだり、恋人とトリュフポップコーンやポテチを分けて映画をみたり。普段の時間を特別なものに変える魔法のアイテムだと思います

まだとてもお若い菜乃子さんですが、すでに実業家として起業して活躍の幅を広げられていますが、早々に独立すると決めた理由や背景について教えてください。

大学生のころから何者かになりたかった自分がいました。そのために政治家の秘書として働いたり、渋谷駅前で交番の人と仲良くなりながら路上演奏したり、学生時代アナウンサーも経験しましたが、就活時に母親から「一生慎ましく目立たずに静かに生きてほしい」と言われ、なんだか死にそうな気持になったんです。当時演奏バイトとして銀座のクラブで弾いていましたが、会計の額や来店されていた経営者のお客様たちに刺激されて、自分も絶対独立しようと思ったのが大きなきっかけです。なによりご贔屓くださった有名な方から「君はどこいっても生きていける、心配してない。だからがんばれ」と言っていただけたことが、とても大きな後押し支えになったんです。今でもその言葉は私の支えになっています。

バイタリティの原動力は?

娘の笑顔が見たいから頑張っているところはあります。

プライベートではどう過ごしてますか?大事にしてることは?

娘と過ごしたり妹とごはんを食べたり….家に籠っていると足が退化しそうになるので外に出るようにしています。

これだけは負けない!というものは?

打たれ強いところ。理不尽なことをされたり言われたら10倍で返すようにしていますね。 小学生の時に同級生から「踏んでも、踏んでも起き上がるから麦みたい」って言われました。まず、踏むな!踏まれないぞ!とは思いましたが。

少女時代の菜乃子さんはどんなお子様だったのでしょう? 忘れられない経験談などあれば教えてください。

幼稚園の頃からあまり人と喧嘩するのが得意でなかったし、言い返せなかったんですよね。いじめられるとよく家でメソメソしていました。誰かのグループに入って群れることもしないタイプだったので、いつも一人だった記憶です。放課後誰かと遊ぶことを禁止する厳しい家庭だったせいもあり、なかなか友達の輪の中に入れずにいた記憶があります そのせいか、話し相手といえば8歳下の妹や楽器、本や植物でした。妹が生まれたときは本当にうれしくてとても可愛がって、私が育ててました(笑)。

ご自身の好きなところ教えてください。

フットワークが良いところ。基本仕事がある、もしくは会いたい人がいるところかな。娘が行きたい!と言ったらどこにでも行きます。

では3年先の菜乃子さんのビジョンは?

娘がその頃6歳ですよね。 私も20代最後の年だと思うのでこの10年頑張ってきて本当に良かった!と思えるような仕事ができたらいいですね。娘が親のことを聞かれたときに自信満々に「ママはこんなお仕事しているんだ!」といえるような状況を作りたいです。

生きる上で大事にしていること教えてください。

持っているカードで人生を生き抜く。ほしいカードは王子様が持ってきてくれるわけではないので自分で獲得しにいくこと。自分の常識だけで判断しない、物事をゼロベースで考えられるようにすること。

颯爽と歩きながら向かっていくスピードも、そして創りあげていく未来も、きっと私たちの想像をはるかに超えていきそうな菜乃子さん。
新たな感動を求め、旅と冒険を臆することなく続ける菜乃子さんが、国内外で仕掛けていく型破りなプロジェクトから今後も目が離せません。

奥村菜乃子
Nanako Okumura
インペラトリス株式会社 代表 / ヴァイオリニスト
熊本県出身。
4歳よりヴァイオリンをはじめ11歳で全日本ジュニアクラシック音楽コンクール最高位受賞。後に佐渡裕率いるスーパーキッズオーケストラのメンバーとなる。2014年早稲田大学入学。在学時に表紙モデルやテレビ朝日でアナウンサー、日本テレビイベントコンパニオンを務める。その後会社を立ち上げ現在はイタリア専門商社としてトリュフ、高級生地、レザー製品の取扱を行なっている。一児の母。

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Interview / Photo / Editorial design : 雨森希紀(Maki Amemori)